はじめての……。



「あのさ、あのさ、カカシ先生……。」

『恋人』と言う言葉すらまだまだ気恥ずかしくて―――。
ずっとずっと好きだったカカシと『恋人同士』になってひと月。
カカシの家で夕飯の片付けを終えた後、二人でソファで寛いでいる時、今日はずっと落ち着きの無いナルトが、意を決してカカシを見上げた。

「ん?なーに?どうしたの?ナルト。」

やっと話してくれる気になったみたいだね。
今日のお前がそわそわしている理由。
オレの目をちっとも見てくれなくて、たまに目があっても真っ赤になって俯いちゃう―――そんなお前の心の中を、やっと話してくれる気になった?

カカシは極力ナルトを刺激しないように、ちゃんとその理由を話せるように、ナルトを見つめてにっこり微笑んだ。

その笑顔を見ると、ナルトは頬を真っ赤に染めて唇を震わせた。
そして、カカシの目から逃げるように視線を逸らすと、小さな声で告げる。
「ちゅうして欲しいってば……。」

「へっ!?」

カカシは素っ頓狂な声を上げる。


ちょ、ちょっと待って!
ナルト、今何て言ったの?


あまりにも場にそぐわない声を上げたカカシに、ナルトは不安そうな瞳を向ける。

「ナルト?あの……もう一度言ってくれる?」

頬を引き攣らせてカカシがそう言うと、ナルトはビクリと肩を震わせ、そして両の手の拳を握り締め、叫んだ。

「ちゅうして欲しいってばよ!」


ちゅう……。


カカシの思考が一瞬止まった。


ちゅう……。


「ちゅう……って……その……ナルトが言ってる『ちゅう』ってさ……。」


キス……の、ことだよね?


「えっと……それは、いつもナルトのおでことかにさ……。」

「違うってばよ。カカシ先生がいつもオレのおでことか、ほっぺたとかにしてる『ちゅう』じゃなくって……ちゃんと、ちゃんと口にするヤツだってば……。」

カカシはゴクリと喉を鳴らした。

ナルトは無言のままでいるカカシの態度に一気に不安になり、早口で喋りだす。

「キバやシカマルが言ってたってば!恋人同志なのに口に『ちゅう』しないのは変だって……。」

正確には、キバやシカマルは『ちゅう』ではなく、『キス』と言ったのだが、ナルトにはどうしてもその単語が恥ずかし過ぎて、あくまでも『ちゅう』と言い続ける。

「カカシ先生は大人なのに、大人なのにそんなのおかしいって。」

ちょっと……それは聞き捨てならないね。
人のこと不能みたいに言ってくれちゃって……。
キバとシカマルか……。
全く、紅とアスマの教育、なってないね。

カカシは心の中で沸々と怒りを燃やしていた。

「それに、オレ達の話し聞いてたサスケまで『お前はからかわれてるだけだ』って言ったってば。カカシ先生、オレをからかってるってば?」
「なっ!!何言ってんの、ナルト。オレはお前をからかったりしてないよ!」

カカシはナルトをぎゅっと抱き締めた。

「せんせ……。」

大切で、大切で……、好きで、好きで、大好きなナルト。
キスしたいのは当たり前。
でも、それでもオレがキスしなかったのは……。

「あのね、ナルト。先生、ナルトが好きでね、好きで好きで大好きだから、一度キスしちゃったらきっと大変なことになっちゃいそうなんだよね。」

「大変なこと……?」

「そう……ナルトにね、もっとエッチなことしたくなっちゃうから……きっと。」

一度その幸せを味わったら、きっとタガが外れてしまう。
きっとお前の全部が欲しくなる……。

「が、我慢出来ないってば?」

ナルトが少しだけ不安気にカカシを見上げる。

「んー、無理かもね。」

カカシは苦笑する。

「いいってば!!」

ナルトはカカシの胸にしがみついた。

「ナルト?」

「いいってばよ!だって、だってオレだってカカシ先生が大好きだってば!オレだってカカシ先生とちゅうしたいってばよ!」

ナルトはそう叫ぶと、そっと顔を上げた。
目元は赤く染まり、瞳は潤んでいる。

「それに……もっとエッチなことだって平気だってば……。カカシ先生になら何されたって平気。だから……だから……。」

「ナルト……。」

「だから、カカシ先生、オレのことほんとに好きだったら、ちゅう……っ!」

ナルトの言葉はそこで途切れた。
続けられる筈だった言葉はカカシの唇によって塞がれる。

「ん……。」

ちゅう……してるってば……。
カカシ先生のくちびる……。
先生のくちびるが……。

カカシは啄ばむような口付けをひとつ落とし、ナルトを解放した。

「大好きだよ。ナルト。」

さも愛おしそうに、カカシはナルトの頬を優しく撫でる。
ナルトはその手にそっと自分の小さな手を重ね、頬を摺り寄せ、目を閉じた。

「せんせ……オレも……カカシ先生が大好きだってば。オレ達、これで本当の恋人同士だってばね?」

「今までだって恋人同士だったでしょ?」

「でも……。」

見上げたナルトの瞳をカカシのそれがしっかりと捕らえる。

「ここからは大人の領域だよ、ナルト。お前を全部オレのものにしちゃうから、覚悟してね?」

カカシはにっこりと微笑んだ。

その言葉が実行されるまでに、それ程の時間はかからないかもしれない―――。






え〜と、これは、まずお絵描き掲示板で連載(?)を始め、途中で挫折し(笑)、次に『web拍手』のお礼画面に使っていたお話です。
『web拍手』の時は絵は付けていませんでした。
いつか絵の方もちゃんと書いてからまとめようと思っていたのですが、既に1年以上経ってしまいましたので、諦めました。
不甲斐ない奴ですみません……(苦笑)




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