憧れと…愛しさ……

ずっとずっと……傍に居たい……










BELIEVE










「カカシ先生〜?何処だってば〜?」


いつものように、自分にとっては物足りない任務に着き、無事に午前中が過ぎて、ゆっくりと昼食を摂った後……やはりいつものように知らぬ間に姿が見えなくなっていた担当上司を、ナルトは探していた。


「あ!まーた寝てるってば…」


大きな木の根元に寝転がっているカカシの姿を見つけたナルトは、半ば呆れ顔で近付いて行く。
案の定、顔半分をマスクで覆った上に、愛読書が乗ったままだ。

「カカシ先生?そんな所で寝て、風邪引くってばよ?」


「ん〜?大丈夫。寝てないから……」


今にも途切れそうな声でそう答えるカカシに、ナルトは腰を屈めて更に続ける。

「先生!いくら春だからって、まだ風は冷たいってば……本当に風邪引くってばよ……」

カカシが夜も任務に出ていることはナルトもよく知っていた。
二人、同じ家で暮らすようになってから、尚更カカシの任務のキツさも解った。
だから、ナルトは以前とは違う不安に駆られる。



『カカシ先生、危険な任務ばっかりで大丈夫だってば……?』


その不安が……


『カカシ先生、身体壊すってば……』


そう形を変えるまでに時間は掛からなかった。



「先生、カカシ先生ってば!!」

ナルトの説得も空しく、今にも眠りに落ちそうになっているカカシの身体を、少し乱暴に揺する。

「ん…解った…解ったよ……寝ないから…だからね…ナルト……」

本を少しずらして、見えている方の目で見つめられたナルトは、ピクッと身体を震わせた。
恋人―――その単語にまだ慣れる事が出来ないでいるナルトは、見つめられただけでもご丁寧に反応を示す。


「ナルト…此処に座って……膝貸して……」


「え?座るってば……?でも、もうすぐ時間に……」

その言葉を遮るようにカカシが続ける。

「いいから……ちょっとだけ……ね?」

ナルトはしぶしぶ、言われたようにその場に腰を下ろし、足を投げ出した。

「よいしょ…っと…」

カカシは大きな身体を少し起こすと、ナルトの小さな太ももの上に、その頭を乗せる。

「あ〜、気持ちいい…」

いかにも満足そうなその声に、ナルトは何も言えなくなる。



憧れてた…

ずっと…凄い人だと思ってた……

勿論、それは今も変わらないけれど……

でも……



ナルトはそっとカカシの銀の髪に手を伸ばし、ゆっくりと撫でる。



憧れが……好き……に…なって……

そして…今では……もう一つ増えたってば………

きっと…きっとこれって……





愛しい―――って、気持ちだってばよ……






カカシ先生は大人で……身体もこんなに大きいけど…
でも……
―――守りたい―――って、思うってば……。
オレなんかよりずっと強い先生に…そんなこと思うのは変だと思うけど…でも……本当にそう思う……




「こら、ナ〜ルト?何してんの?」

「へ?」

ふいに髪を撫でていた手を捕らえられ、ナルトは面食らう。



「そんな可愛いことしてるとね……」



その手を引かれ、頭の後ろにもう片方の手を掛けられたと思った次の瞬間、いつの間にかマスクを外していたカカシは、ナルトに触れるだけのキスを落とした。



「キス…しちゃうよ?」



「も、もうしてるってば!」

真っ赤になって怒り出すナルトに、カカシは楽しそうに笑い出した。

「ははは、いいじゃない、別に……。だってオレ達恋人同士でしょ?」

有無を言わさぬその言葉に、ナルトは言葉を詰まらせ、ただただ、真っ赤な顔を向けるだけだった。



「ナルトのおかげで眠気も覚めたし……そろそろ行こうか?」

「うん、そうだってばね。」

「……でも…気持ちのいい日だねー…。」

「うん……ほんとに春がそこまで来てるってば……。」


桜の蕾もすっかり膨らんで来た木の根元から、二人が立ち上がるのはもう少し後になってからのことだった――――――。







END








同じタイトルの曲がこんなにあるなんて知りませんでした(苦笑)
今回、私がこのお話を書くきっかけになった『BELIEVE』が解ったらすごいですvvv
ただただ幸せな二人を書きたくて……
それだけでした……。

火野 晶 
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