「ナルト、好きだよ。愛してる。」
カカシ先生が何度も囁く。
オレは、まだ荒い息のまま、ぼんやりとそれを聞いている。
「ナルト、ねぇ、ナルトは?」
カカシ先生はオレの首筋をキツく吸い上げて、答えを催促する。
「―――んっ…せんせ…そこ、ダメだって言ってんのに……。」
「これから出掛けるわけでもないんだから、いいでしょ?すぐ消えちゃうんだから……。」
カカシ先生の声音はまだ、熱を帯びたまま―――。
オレの身体にいくつも赤い印を刻む。
「これ見てるとね、―――ナルトはオレのモノ―――って、確認できるの。ねぇ、ナルト?」
もう一度催促されて、オレは言葉にする。
「―――オレも、カカシ先生が好きだってば―――。」
こ と だ ま
言霊
『今日もちゃんとナルトの家に行くから、待っててね。』
任務の後、カカシにそう言われ、ナルトはすっかり日課となってしまっている二人分の夕食作りの為、家路を急いだ。
材料はありとあらゆる物をカカシが運んで来るので、ナルトが買い物に行く必要は無かった。
今日はどれを食べればいいかな……。
ナルトは冷蔵庫の中身を思い出しながら歩いていた。
カカシが来ればバトンタッチでナルトは何もしなくて良くなるが、材料を貰った上にいつも作って貰うのでは、気が引ける。。
見よう見真似で、ナルトも少しずつ料理を覚えていた。
陽が落ち始めた中、橋を渡っていたナルトは、夕陽で赤く染まる川の水をぼんやりと見ている内に、足を止めた。
橋の欄干に頬杖を付く。
オレ……本当にカカシ先生のこと好きだってば?
尊敬はしていると思う。
好きなことも確かだ。
けれどナルトはそれが―――たったひとりに対する好き―――かどうか、最近疑問に思っていた。
カカシに好きだと告白され、戸惑いながらも求められるまま付き合い始め、すべてをカカシに委ねてから半年。
このままでいいのか解らなかった。
はっきりした答えが欲しいってばよ。
オレってば、本当の本当にカカシ先生を好きなんだ―――って、思いたいってば。
「どうしたんですか?」
突然かけられた声に驚いて振り向けば、相変わらず顔色の悪い男が立っていた。
中忍試験の際に知り合ってから、ナルトによく声をかけるようになった人物―――。
「ハヤテ先生……。」
「ごほっ…元気が無いように見えますが?」
軽い咳をしながら、ハヤテはナルトの横に立つ。
「そんなこと、無いってばよ……。ただ、ちょっと考え事してただけだってば。」
少し膨れてそっぽを向いてしまったナルトを見て、ハヤテは『そうですか』とだけ言って、その場から立ち去る事もせず、ナルトと同じように川を見つめた。
ナルトは暫く真剣な顔をしていたが、静かに口を開いた。
「ハヤテ先生……好きな人、いるってば?」
「私ですか?ごほっ……。」
ハヤテは一瞬目を丸くしたが、すぐにいつもの表情に戻り、ぽつりと言う。
「……どうでしょう……ねぇ……。」
その曖昧な答え方に、ナルトが即座に反応した。
「えっ!?ハヤテ先生も解らないってば?」
今にも掴みかかりそうな勢いで、ハヤテを見上げる。
「私も……?って、ナルトくん?」
「ハヤテ先生も、好きかどうか解らない人がいるんだってば?」
まるで助けを求めるようなその表情に、ハヤテは曖昧な返事をするわけにも行かなかった。
「いえ……『いる』と、はっきり言うのが恥ずかしかっただけですが?」
「えっ………なんだ……違うのか…。」
途端にナルトはしゅんと俯いてしまった。
「ナルトくん。ナルトくんにはいるんですか?その……ごほっ……好きかどうか解らない人が……。」
「もう、いいってばよ。」
ハヤテがナルトを覗き込んで見ると、今にも泣き出しそうな顔をしている。
見過ごす訳には行かなかった。
ハヤテは回りくどい言い方をする気にもなれず、単刀直入にナルトに問い掛けた。
「カカシさんですか?」
「な、なんで解るってば?」
ナルトが心底驚いたと言う顔でハヤテを見上げる。
「なんとなく……なんですね。」
付き合っていることを公にしていなくても、解るものですよ……。
ずっと……見ていれば……。
「話してくれませんか?」
ハヤテは出来るだけ優しく声をかける。
話してくれなければ、自分にはどうすることも出来ないのだ。
その思いが通じたのか、ナルトは視線を川に移してから話し始めた。
「……オレ……カカシ先生のこと、好きだと思うけど、でも、ほんとは誰でも良かったんじゃないか―――って。この頃そう思うってば。カカシ先生、すげー優しいし、カッコいいし、そんな人に『好き』って言われて……そんで、オレも好きなんだと思ってるだけなんじゃないか……って、思うんだってば。」
「ナルトくんも、カカシさんに好きだと言ったことはあるんですか?」
「しょっちゅう言わされてるってば!カカシ先生、何度も聞くんだってばよ?好きか―――って……。」
ハヤテは顔を曇らせる。
「しょっちゅう……ですか?」
「うん……殆ど毎日……だってばよ。」
その言葉を聞くと、ハヤテは顎に手をやって考え込んでいるようだった。
そして、しばらく経ってからぽつりと口にした。
「言霊―――。」
「え?……こと……だま?」
初めて聞くその単語に、ナルトは小首を傾げて、ハヤテを見上げる。
「ええ……『言霊』です。人が口にする言葉には特別な力があるんです。呪文―――とか、知っていますか?」
「知ってるってば!魔法使いが使ったりするってば!」
自分の知っている単語と似た意味だったのかと、ナルトは得意そうに答えた。
そんなナルトを見て、ハヤテは微笑んだ。
「忍術を使う時も、口にしたりしますね?」
ナルトは黙って頷いた。
「言葉にすると、本当になってしまうことがあるんですよ。」
「えっ!?」
あまりにも突飛なことで、ナルトは口をポカンと開けたまま―――。
「人の言葉にはそのくらいの力があるんですね。だから余りよくないことは口にしてはいけないんです。嘘や、想像でも……。ごほっ…。」
「じゃ……オレってば、ずっとカカシ先生のこと『好き』って言ってたから……。」
「ええ……。」
唇を震わせながら不安そうにハヤテを見上げるナルトに、ハヤテは頷きながら答える。
「ど、どうしよう……ますます解らなくなって来たってばよ〜!」
頭を抱えてパニック寸前のナルトの肩に、ハヤテはそっと手を置いた。
「試してみたら、どうでしょう?」
「試す?」
「誰でもいいと言うのなら、私でも、いいのでしょう?」
「え?ハヤテ……先生?」
ハヤテはナルトを抱き上げると、近くの高い木の上に飛び乗った。
太い枝に腰を下ろすと、ナルトを膝の上に向かい合う形で座らせる。
「ここなら人目に付かないんですね。」
「な、何?ハヤテ先生?どうしたってば?」
「好きですよ。ナルトくん。」
「ハ、ハヤテ先生……何言ってるってば……そんなこと、言っちゃダメだってばよ。」
「好きです……ナルトくん……。」
ハヤテはナルトの言葉など、おかまいなしで、ナルトの顎に手をかけると、その唇に己のそれを重ねた。
そして、ナルトが驚く暇も無く、すっと離れる。
「どうですか?嫌ですか?」
「い……嫌じゃ無いと思うってば……でも……!」
ナルトが全て言い切らない内に、再びその唇を塞ぐ。
啄ばむような口付けを何度も落とした後、深く、角度を変えて思う様、味わう。
「…んっ……ふ……んんっ……。」
「ナルトくん……。」
「……は……ん…。」
苦しさにうっすらと開かれた唇から舌を滑り込ませ、口腔までも貪る。
くちゅ……ちゅ……。
しんと静まり返った中、二人きりの行為に、ナルトは酔いしれた。
気持ち……いい……ってば。
やっぱりカカシ先生じゃなくっても……。
カカシ……せんせ……。
カカシ先生以外の人とキスしてるってば……。
カカシ先生……。
『好きだよナルト。愛してる―――。』
『愛してるよ……お前だけだよ―――。ナルト。』
カカシ先生……。
カカシ先生……。
カカシ先生――――――。
「―――っ……。んんっ!んっんっ……。」
ナルトは身を捩り、拳でハヤテの背を何度も叩いた。
漸くハヤテが唇を離すと、思い切り突き飛ばす。
「ナルトくん……。」
「やだ……ってば……。」
その言葉に、ハヤテは身体を強張らせた。
「やだ……カカシ先生でなきゃ、やだってばよ!!」
そう叫ぶと、ナルトは木の上から飛び降り、アカデミーの方角へ走り去った。
ハヤテはその後ろ姿と、自分の両手を何度も見比べる。
「……逃げられてしまいましたね……。」
誰でも良かったなんて……言わないで下さい……。
私にも望みがあったのではないかと、勘違いしたくなってしまいます……。
もしも私が上忍で……もしも私があなたのチームの担当だったなら―――?
そこまで考えてから、静かに首を振ると唇に手をあてた。
「役得……ですね。」
ハヤテはうっすらと微笑んだ―――。
カカシ先生。
カカシ先生。
カカシ先生―――。
ナルトはアカデミーに向かって走った。
今ならまだカカシは報告書を提出するかしないかだろう。
あまりのナルトの急ぎ様に、どうしたのかと途中で何人もに声をかけられたが、誰だったか気にすることも出来なかった。
案の定、カカシは報告書を提出したばかりで、数人の上忍と、話しをしていた。
「最近付き合い悪いわよ、カカシ。」
カカシと同じような年齢に見える女が、カカシを見据える。
カカシは頭を掻きながら微笑む。
「悪い悪い。ま!皆で楽しんで来てよ。」
「なんで?用事でもあるの?」
「ん?用事って言うかね……。」
煮えきらないカカシに、もう一人の女が痺れを切らし、口を出す。
「ねぇ、行きましょうよ。今日なら皆都合がいいのよ。滅多に集まれないんだから……。」
「んー……でもねー。」
やれやれと言う感じのカカシの背中を、男の一人が叩いた。
「なんだよカカシ、お前酒強かったじゃねぇか。行こうぜ。」
「そうそう、ね、決まりー。」
そう言った女がカカシの腕にその細い腕を絡めた途端、カカシはもう片方の腕を強く引っ張られた。
「カカシ先生!!ひどいってば!!」
「な、ナルト?どうしたの?」
見ればナルトは大きな瞳に涙を浮かべていた。
「ひどいってば!ひどいってばよー!!」
「何があったの?ね?ナルト?」
「来てってば!」
ナルトに腕を引っ張られ、カカシは素直にそれに従う。
「カカシ……!」
「悪い!」
その場に居た者に呼び止められると、カカシは振り向いて申し訳無さそうに叫ぶと、アカデミーを後にした。
「どうしたの?何があったの?ナルト。」
道から少し外れた木蔭で、ナルトが足を止めると、カカシは先程から何度も繰り返している問いかけをする。
「ひどいってば……あの人達と行っちゃおうとするなんて……。」
「いや、行くつもり無かったし……。」
「嘘だってばよ!綺麗な女の人の前でニヤけてたってば!」
「ニヤけてなんていません。」
「腕組んだってばよ!」
「あれは向こうが勝手にして来たんでしょ?―――っ…」
カカシが言い終わる前に、ナルトはまるでぶつかるかのようにカカシにしがみついた。
カカシはその髪をそっと撫でる。
「どうしたの?ナルト。ちゃんと聞かせて?」
「カカシ先生、キスしてってば!」
「え?」
「キス!してってばよ!」
自分を見上げて、怒ったような、泣きたいような顔をしているナルトの願うまま、カカシは身を屈めてマスクを外すと、ナルトの唇に己のそれを重ねた。
軽く、啄ばむように一度だけキスを落とし、カカシはナルトを見つめた。
その途端、ナルトに両手で首を引っ張られた。
「こんなんじゃ無いってば!いつもみたいの、して欲しいってばよ!早くしてってば!」
きっと、今は何を言っても無駄だと解ったので、カカシはナルトの気の済むまで付き合うことにした。
ナルトの頬を両手で包むと、乱暴に口付ける。
歯列を割り、舌を絡めれば、いつもは怯えるようにしていたナルトが、今日は積極的に答えて来た。
くちゅ…ちゅ…。
お互いの息遣いが荒くなるにつれ、口付けも激しさを増す。
「ん……ん……はぁ…ん……。」
「ナルト……。」
ちゅぷ……くちゅん……。
「……あ……ん……せ…んせ……もっとぉ…。」
不満気な声を漏らすナルトの唇を開放すると、カカシはナルトの耳元で囁いた。
「これ以上すると、止められなくなっちゃうよ?いいの?」
その言葉にナルトが一瞬身体を強張らせる。
「続きは家に帰ってからね?」
カカシの甘い囁きに、ナルトは小さく頷くと、もう一度、カカシにしがみ付いた。
ナルトの息が整うのを待ってから、カカシは問い掛ける。
「落ち着いた?どうしたの?一体……。」
「せんせ……。」
「ん?」
「オレってば、ほんとに……先生を好きなのかな―――って……。」
カカシの目が驚愕に見開かれる。
「ナルト……。」
「初めて『好き』って言われたから…だから…ほんとは誰でも良かったんじゃないか―――って……。そんで……そんで……さっき帰る途中でハヤテ先生に会って、そのこと言ったら……。」
「ハヤテに言ったの?」
「カカシ先生だってことは言わなかったってば。でも……でもなんか解っちゃって……。」
「ま!そりゃ解るわ……。」
「そ、そしたら……そしたらハヤテ先生ってば……オレに……オレに……。」
カカシは、赤くなってしどろもどろになってしまったナルトに、威圧的な声をかける。
「ナルト?何かされたの?」
その声音に、半ば反射的に顔を上げると、ナルトは咄嗟に声にした。
「……キ……キス……。」
カカシは盛大な溜息を吐いた。
「キスさせたの?ナルト……。」
明らかに怒っているカカシの様子に、ナルトは頷くことしか出来なかった。
誰でも良かった―――か……。
覚悟はしてたけどね……。
その上キスまでさせたなんて……。
今日は厄日なわけ?こんなことならさっさと飲みに行けば良かったね、全く―――。
カカシが冷ややかな目を向けると、ナルトは思わず身体を離した。
「それで?せめてもの罪滅ぼしでオレともキスしに来たってわけ?」
「……!ち、違うってば……。」
「ハヤテのキスはどうだった?あいつはああ見えてもやることはやってるみたいだから、ちゃんと気持ち悦くしてくれたでしょ?」
「せんせ……。」
ナルトが愛情に飢えているのは重々承知だ。
だから自分もそこに付け入るようにして、ナルトを手に入れた。
けれど、こうまであからさまに言われると、流石にキツイ―――。
今日は一緒に居ない方がいいな……。
自分でもナルトに何するか解らない―――。
「ナルト。一人で帰ってくれる?」
「ど…どうしてだってば?」
視線を外し、冷たく言い放つカカシに、ナルトは恐る恐る聞き返す。
「先生、用事を思い出しちゃったの。」
「さっきの人達の所へ行くってば?」
無言なのは肯定を意味するのだと、ナルトは知っていた。
「そうなんだってばね?先生……今日もオレんとこに来るって言ったってば。なのに……。」
「今日はお前と居たくないの。解った?」
ナルトを見下ろすその瞳は、いつもと違い何の感情も見られなかった。
そんなカカシをナルトは淋しげに見つめる。
「……解った……ってば……。」
ナルトがそう言うと、カカシは背を向けようとした。
「先生。」
ナルトに呼び止められ、振り返る。
「先生は他の人ともキスしたりする?オレとしてるようなこと、他の人とも出来るってば?」
カカシは溜息を吐き、苦笑する。
「―――前はね……。ほんと、誰でも良かったんだよ。ナルトに会う前はね……。」
「オレに……会う前?」
「そう、ナルトに会ってね。オレは……ナルトでなきゃダメになっちゃったの。でも、ナルトはオレじゃなくてもいいんでしょ?誰とでもキスしたりしちゃうんだよね?」
「でも……でも……やだったってば……。」
その言葉に、カカシが怪訝そうな顔をする。
「やだった―――って、ナルト?」
「オレもそうなんじゃないかって思ってたってば。誰でも良かったんじゃないか―――って。でも、ハヤテ先生とキスしてる時、カカシ先生の顔とか、声とか、思い出して……そしたらすげぇやだったってば。オレ……ハヤテ先生のこと嫌いじゃねーのに、でも、でもあんなんはやだってばよ。」
「ナルト……それ、本当?」
カカシにいきなり肩を掴まれ、その痛みにナルトは顔を顰める。
「本当だってば。だから、ハヤテ先生突き飛ばして来ちゃったってばよ……。カカシ先生でなきゃやだってば。」
カカシは掴んだ肩を引き寄せ、己の腕で強く抱き締めた。
「せん……せ?」
「ナルト、ごめん……。ごめんね?それが解ればもういいよ。」
「先生……オレも、ごめんなさいってば。」
ナルトは身じろぎ、なんとか顔を上げる。
「ハヤテ先生とキスしたりして、ごめんってば。」
「もういいから……。」
全く……なんてみっともない―――。
ヤキモチなんか妬いてナルトを傷つけて……。
自分の感情を優先させて……。
カカシはナルトを抱き締める腕に力を込めた。
それに応えるように、ナルトもカカシの腰に腕を回す。
「カカシ先生、オレ、言霊……の、せいでもいいってばよ。」
「え?何?」
突然出て来た単語に、カカシが戸惑う。
「言霊だってばよ。ハヤテ先生が言ってたってば、口にすると本当になるって。カカシ先生、ずっとオレに『好き』って言わせてたってば?」
「オレがわざと言わせてたって―――?そう思うの?」
カカシは目を丸くする。
「違うってば?」
ナルトが意外そうに言うと、カカシは微笑んだ。
「オレは臆病だからね。毎日ナルトの気持ちを確認していたかったの。それだけだよ?でも、ナルトはオレが言わせてたから、オレを好きになったって―――そう思うの?」
「えーと、えっ……と……。カカシ先生のことはずっと前から好きだったってば。カカシ先生と二人でいるようになって、もっともっと好きになったんだってば。」
「それは自然なことだと思わない?」
ナルトはハッとすると、やっと―――にっこりと笑った。
「オレ、ちゃんと自分でカカシ先生を好きになったんだってば。」
「オレが好き?」
ナルトは黙って頷く。
「ちゃんと言って?ナルト。」
カカシはナルトの顔を両手で優しく包む。
「好き……カカシ先生が好き……。カカシ先生じゃなきゃやだってば。オレ……オレってばほんとにカカシせん……。」
最後の方はカカシによって飲み込まれた。
カカシの感情が流れ込んで来るようなその口付けに、ナルトも精一杯応える。
「好きだよ……ナルト。」
口付けの途中の甘い囁き。
そのカカシの声にすら、身体が悦びに震える。
カカシ先生が好き――――――。
本当に本当に大好きだってば――――――。
「もう、誰にもキスさせたりしちゃダメ。いーい?」
カカシが名残惜しそうに唇を離すと、ナルトはうっとりとカカシを見つめた。
「ん……わかったってば。」
その表情を見て、カカシは眉を潜める。
ハヤテもナルトのこんな顔見たってわけ?
やっぱり明日一発殴って釘さしとかないとね……。
「さ……帰ろっか。お腹空いたしね……。」
「でもさ、カカシ先生。やっぱりハヤテ先生ってばいい先生だってばね。」
「なんで?」
カカシは心底嫌そうな顔をした。
ナルトはにっこりと微笑むと、カカシの手を握る。
「だって、オレに解らせる為にキスしたってば?すげーいい人だってばよ!」
あーあ……それ聞いたらハヤテは泣くだろうね……。
流石、意外性bP……。
「カカシ先生?どうしたってば?」
「なんでもなーいよ。」
二人は手を繋いで、ナルトの家に向かって歩き始めた―――。
END
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