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【Virgin Kiss】
先生の傍にいるようになって、もう2ヶ月近く。
任務が終わって、どっちかの家でご飯を食べ、時々泊まったりしている。
いつも優しく抱きしめてもらって、先生は甘く愛を囁いてくれて。羽のようなキスをくれる。
”お付き合い”のわりには、至って健全なものだった。
だけど最近変だなって思う。
そんな優しい顔で”好きだよ”って囁いてくれるのに、何で先生はそれ以上欲しがらないのかな。
ナルトはサクラから借りたティーンズ向けの女の子の雑誌をめくる。
カカシとナルトの関係を知っているサクラは、あまりのナルトの子供っぽさに呆れて、
それを貸したのだ。
ペラ…とページをめくるたびに目に入るのは”今流行りのファッションはこれだ!”とか、”今超人気の香水特集”、”大好きな彼へのプレゼント必勝法”…etc…。
あまりにも興味のないものばかりで、ナルトは欠伸をした。「これ読んで勉強しなさい!」と渡したサクラの意図がナルトにはまったく理解できない。
「あ〜あ…よく判んないってばよ……」
久しぶりの独りの夜。
本日コイビトはお仕事中。
その暇つぶしに読んでたのだが…。
「?!」
ナルトはがばっと跳ね起きる。
たまたまめくった次のページが、”私の性体験談”というもので。
ざっと眺めてみれば、投稿者のカレとの体験話が数ページによって書かれている。
自分もコイビトのいる身。
興味も手伝ってか、ナルトは真剣に読み始めた。
そこの記事を全部読み終わって、ぱたりと雑誌を閉じる。
かなり心臓がバクバクいってて、顔は真っ赤。
こ、これってコイビトとするんだよな……。
そういったことに関して免疫の極端にない少年はかなり動揺してて。
だけどそれも過ぎてしまうと残るのは不安のみ。
そういえば、先生ってば軽いキスしかしてくれないってばよ……。
しゅん、と項垂れて、だけどもし自分が、と想像してまた真っ赤になる。
赤くなったり青くなったりとなかなか忙しい独りの夜だった。
翌日の夜、ナルトはコイビトの家で過ごしていた。
一緒にお風呂に入って過ごす、穏やかな時間。
少年はこの日も想像と不安とに忙しかった。
あまりのいつもと違うナルトの様子に、カカシは内心首を傾げていた。
「ナルト、どうしたの?」
表情をくるくる変える様は傍から見てればかなり面白かったが、また変な考えにとり憑かれているんだな、と水を向ける。
「え?!ななな何でもない!!」
小さなカラダをびくっとさせ、ナルトは真っ赤になって否定した。
しかしそんな顔で言われても、説得力の欠片もない。
まったく…。
カカシは苦笑して、小さなカラダを膝の上に乗せ目線を合わせた。
「そんなこと言ってウソでしょ?何考えてたの、白状しなさい」
「何も考えてないってばよ!」
「あのねぇ、そんな真っ赤になって言われても信じられるわけないでしょ?……それとも……俺には言えないこと……?」
悲しそうな顔でじっと見つめるカカシ。
上忍の凄まじい演技力を見抜けないナルトは、カカシのほんとに悲しそうな顔に、ドキッとしてしまう。
「そそそんなことないよ!」
慌てて否定しても、カカシの表情は変わらない。
「どうしよう〜〜」とプチパニックに陥りながら視線を落として考え込んだ。
…でもいい機会なのかな。
先生がコイビトのキスをしてくれない理由。
実際するとなったら多分心臓麻痺で死んじゃうかもと思いつつ、でもしてくれない寂しさ。
試してみよう……かな?
上目遣いにカカシを見上げれば、まだ悲しそうに見つめている。
何度か口を開き言おうと試みるが、喉で蓋されて言葉にならない。
ええい!俺ってば意気地なし!!
すっごく恥ずかしいけど、断られることはないだろうと鼓舞し、じっと見つめてくる視線を避けるように、怒鳴った。
「せ、先生!き……キス…してってば!」
まるで怒ったように言うナルトにカカシは目を丸くする。次の瞬間、思わず笑いが零れた。
そうきたか。さすが意外性bPだね……
だけどその言葉が嬉しくて。
恥ずかしがり屋のコイビトの思いがけない言葉は確実にカカシの理性を削っていた。
「ナルトが欲しいって言ってくれるなら、幾らでもしてあげるよ…」
好きだ、と囁くのと同じトーンで言うと、小さな顎に指をかける。たったそれだけのことに身を震わせる可愛い少年。
その艶やかな唇にいつものキスをし、離れた。
顔を見れば相変わらず真っ赤だったが、複雑な色を浮かべて。
カカシにはその色の意味が判らない。
「ナルト?」
もしかして嫌だったのかな?でも言い出したのはナルトの方だし…。ああ、だけどいつもと反応が
……!
大人は大人でプチパニックをおこしていたとき、その小さな手がいきなりカカシの頬を挟んで固定した。予想もつかない行動に瞠目したカカシの唇に押し付けられる、それ。
うわ〜、ナルトからのキスって初めてかも〜!
独りご満悦のカカシは、ナルトの行動に固まった。
触れ合った唇の隙間から、温かな感触が入り込んできたからだ。
だけどそれは一瞬掠めるだけで離れていった。
驚いて見れば、真っ赤になって怒ったような顔をしていた。
「…ナ、ナルト……?」
不覚にも、カカシの顔も真っ赤になって。
おろおろしたように名を呼ぶと、ぼそっと呟く。
「え?」
「こういうの、…してもらいたいんだってば!」
怒鳴って、これ以上ないくらい真っ赤な顔を広い胸に押し付けて隠してくる。
ハ…ハハハ…。ほんとにお前って意外性bP…。
というより、俺が先越されるとは…。
心の中で乾いた笑いを零し、何気にショックが隠せない。仮にもいい年した大人の男が、
年端もいかぬコドモに深いキスをねだられる不甲斐なさに落ち込んだ。
しかも、ナルトが悩んでいたのはこれか、と気付いて、カカシは助けてくれとさえ思ってしまう。
好きで好きでどうしようもなく好きで。
そんな相手に性欲を覚えないわけではない。
いつだってその甘い舌を貪り、味わいたかったか。
だけどこの子はまだコドモ。
そんなことをしたら怯えさせて下手したら嫌われちゃうかと思った。
それに、そんなキスしてしまったら、もう止まらないこと確実。自分の理性は酷使しすぎてもうボロボロなのだから。欲望に任せて抱いてしまうかもしれない。
カカシがどうしたものか、と考えあぐねていると胸元で零される呟き。
「……俺ってば、もう、子供じゃないってば……」
か細いその言葉に、カカシの中で何かがキれた。
胸に張り付く少年をそっと離し、もう一度顎に手をかける。そして拗ねたような目を覗き込んだ。
「ナルト、こういうキスしたかったの?」
「………ぅ……うん」
少し躊躇いがあるものの、しっかりと頷く少年に囁く。極上の笑みを浮かべて。
「そう言ってくれて俺も嬉しいけど……でも知らないよ?後でどうなっても。それでもいいの?」
何のことだか判らないという顔をしてカカシを見つめ、でも力強く答えた。
「いいってばよ。俺、先生なら何でも許せるってば…」
ふにゃっと笑う可愛い笑顔と言葉に、カカシの理性はあっという間に塵と化した。
顎にかけた手で上をむかせ、薄く開かれた
唇にしっとりと口付けていく。
唇を舐め、ゆっくりと味わうように舌を忍ばせた。
歯列をなぞり、舌を挿しいれれば想像以上に甘い舌が怯えたように逃げた。
「ん……、ふ……っ」
甘い吐息と共に震える体。
今のカカシにはそれを心配するほど余裕などなくて。
逃げる舌を追いかけようとしたら、おずおずとナルトの方から触れてきた。
好きな子との濃厚なキスに、カカシは夢中になり奪い尽くすように深く求めた。
腕の中の体は相変わらず小刻みに震えていたけど積極的に応えるナルト。
長い長い口付け。
部屋に響く濡れた音など、互いの耳には入らなくて。
ふと、受け入れるナルトの顔を見たくて、夢中で求めたキスを終わりにした。
つっと繋がる糸を切るようにもう一度ちゅっと口付けその顔を見て、カカシはもう確実に止まらないことを確信してしまった。
こ、これがナルト……?!
さっきまでの強気な表情など微塵もなく、うっとりと開かれた眼差しが濡れ、白い頬は紅色に染まり、濡れて赤くなった唇の端から伝う、飲み下しきれなかった唾液。
あまりの艶やかさに目を奪われて。
その表情だけでもヤバイのに、痛恨の追い討ち。
「せんせ……、もっとぉ……」
今のカカシには先のことなど見えるはずもなく。テレビも電気も全て点けっぱなしで、腕の中のコイビトを抱えたまま駆け込む寝室。
まだキスの快感から帰ってこれないナルトの舌を堪能し、キスだけでなく体も堪能してしまったのだった。
次の任務の日。
待ち合わせに来たあまりの対照的な二人にサスケもサクラも唖然とした。
この世の春と言わんばかりのツヤツヤな上司に、今にも倒れそうなほどげっそりした同僚。
そのとき決して口には出さなかったが、二人の頭に過ぎったことはまったく同じ言葉。
……ヤりやがったな……。
うんざりした顔の二人など気付くはずもなく、上司はウキウキと任務の説明をしていた。
その後、すっかり事情を聞いたカカシは、さり気なくサクラに礼を言ったところ、「あたしとサスケ君の橋渡しをして!」と凄まれていたらしい。
「Fortunate Pursuit」様でキリ番300を頂き、リクさせて頂きました♪
『大人チューをせがむナルト』と言う、私の煩悩丸出しのリクです(しょっぱなからこんなリクする私って……。)
恥ずかしがりながらもキスをせがむ可愛いナルトvvv
理性が保てなくなるカカシvvv
甘々、ラブラブなとっても素敵なお話に加え、萌えイラストまで付けて頂いて、幸せです〜vvv
あやの様、本当に有難うございましたvvv
火野 晶
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