濃密な空気が漂う中……ナルトの息が整うのを待ってから、桜色に染まったその小さな身体を抱き締めていた腕を緩めた。
カカシは、汗で額に張り付いた金糸をそっと払ってやり、その額に口付ける。


「愛してるよ、ナルト……。」


その言葉を紡ぐ度、愛おしさが増す。

ナルトは白く細い両腕を伸ばし、自分を見下ろすカカシの頬にそっと触れた。

「オレもだってば……カカシ先生……。」

カカシだけに向けられる極上の笑みを浮かべて―――。











約束










「ナルト……。」

「ん……もう、駄目だってば……せんせ……。」

名残惜しげに口付けを仕掛けてくるカカシを、ナルトは両手で押しやった。

「んー、もう一回……。」

カカシは一向にナルトを離す気配もなく、不埒な手は皇かなナルトの肌を彷徨う。

「駄目ってば……!……あ!雪!」

カカシの肩越し、窓ガラスに当たった雪の粒を、ナルトは見逃さなかった。


「ああ……どうりで静かだと思った。」


カカシは振り返り、窓の外へ目を向けた。
しんしんと降る雪が、外界の音を奪い去る。

「積もってるってば?」

「ん?どうだろ……。」

「見て!先生!」

「えー……。」

明らかに不満そうなカカシをナルトがジッと見つめると、カカシはしぶしぶ起き上がり、ナルトの疑問に答えるべく窓を小さく開けた。

「少しだけね、積もってる。2cm位ね。」

ナルトも身体を起こし、窓の外を食い入るように見つめた。

「ほんとだ!真っ白になってるってば!」

「ほら、風邪ひくでしょ?」

暖房は一応つけてあるが、それでも何も身に着けていなければ流石に冷えるだろう。
カカシは窓を閉めると、ナルトの肩に毛布をかけた。

「先生も。」

ナルトはカカシにピタリとくっついて、二人一緒に毛布に包まる。


「あったかいってばー。」


心底幸せそうな微笑み。
その微笑みを見て、自然と顔が綻ぶのを、カカシは感じた。
それは既に日常茶飯事となっていることなのだけれど……。





「今年ももう終わるねぇ。後一週間か……。」

「うん。」

カカシはナルトを覗き込むと、その頬にちゅっと口付けた。

「一年間、任務お疲れ様、ナルト。」

ナルトは照れくさそうに、にへらっと笑う。

「先生もお疲れ様だってばよ。へへ、オレってば来年はもっと頑張る。そんでもっと強くなるんだってば。」

「期待してるよ。」

「早くカカシ先生みたいに強くなりたいってば。カカシ先生と同じ位強くなるってばよ。」

「いつのことだろうねぇ。」

カカシが明後日の方を向き、ぼそりと呟いたのを、ナルトは聞き逃さなかった。

「あ!今すげぇ馬鹿にしたってばよ!」

「してないでしょ?」

言葉とは裏腹に、カカシの瞳は楽しそうに笑っている。

「した!ムカツクってばよ!オレってばカカシ先生に歳では追いつけないけど、それでもいつかきっと、絶対にカカシ先生と同じ位強くなるってばよ!」





一瞬、カカシの表情が強張った。


ナルトがそれを見逃す筈も無く……。





自分は今、何を言った?


ナルトはごくりと喉を鳴らした。


オレ……変なこと言ったってば?





「出来るよ。」





「え?」

酷く悲しそうなカカシの瞳。

ナルトは言い知れぬ不安に駆られる。

「オレに追いついて、オレを追い越すことはね、それ程難しいことじゃないかもしれないよ。」

「せんせ……?それって……。」

心臓がバクバクと音を立て、己を主張する。





「オレの歳を追い越すことは……出来るよ、ナルト。」





ベチッ!


「痛てっ!」


派手な音と共に、カカシが頭を押さえた。
ナルトはじんじんと痺れる右手を左手でさすった。


「避けなかったってことは、悪かったって自覚してるってば?」


ナルトは怒りで唇を震わせる。

「ナルト……。」

「言っていいことと悪いことがあるってばよ!!」



カカシ先生の歳を追い越す。
それは、それは先生が、オレより早く……。



「間違ってはいないでしょ?充分あり得ることだよ。」

「まだ言うってば!?だったらオレだって言うってばよ!」

「ナルト……?」

カカシは怪訝そうにナルトを見つめる。
その瞳を真っ直ぐ見据えて、ナルトは言い放った。





「オレとカカシ先生の歳の差が、もっと開くことだってあるってば!」





「な……っ!」


カカシは一瞬言葉を失う。


「何てこと言うの、お前はっ!」


ナルトの肩を両手で掴み、そして必死でその身を掻き抱く。

「お前が……お前がそんなことになったら……。」

「間違ってないってばよ。充分あり得るんだってばよ。」



「……っ…。」

カカシはぐうの音も出なかった。

今にも泣き出しそうなカカシの表情に、ナルトは微笑んだ。
そして、背中に回した腕で力いっぱいカカシを抱き締めてから、カカシの唇にそっと口付ける。



「せんせ……。約束しよう?ずっとずっと一緒だってばよ?」



「ナルト……。」

「ね?約束だってばよ?」

右手の小さな小指をカカシに向かって差し出す。


そうだね……。


死ですら、ふたりを分かつことが出来ないくらい……。
ずっとずっと……一緒に居よう……。


二人の願いが適うよう……カカシはその小さな小指に自分の小指を絡ませた―――。



雪の夜の、二人だけの永遠の約束――――――。





END






短い。
一応聖夜のお話ってことで……。
あまり意味はないですが……。
甘いだけで終わる。

火野 晶
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