「男同士のHって、どうやるってば?」



上目遣いで、真っ赤な顔をしたナルトの口から出たその言葉に、シカマルとシノは顎を落としたまま固まった。

9月6日、残暑が厳しい晴れた日の午後、中忍となったシカマルの部屋には気まずい空気が流れていた。





やわらかな時間





『どうしても解らないことがあるから教えて欲しい……。』と、ナルトに言われ、シカマルはナルトを自分の部屋に呼んだ。
シノの意見も聞きたいとナルトが言うので、しぶしぶ声をかければ、当然のように『行く』と言う答え。
ナルトがシノを信頼しているのは知っていたが、はっきり言ってあまり面白くはないシカマルだった。

「で?解らないことってのは、なんだよ。」

三人で膝を付き合わせると、シカマルは単刀直入に切り出した。
もともと面倒なことは嫌いだが、ナルトの悩みともなれば別だ。
自分達で解る事なら教えてやりたいし、ナルトの悩みも解決してやりたい。
それはシノも同じようで、黙ったままナルトを見つめている。

「うん……あのさ、あのさ……。」

言いかけて、ナルトは目の前のオレンジジュースを一口飲んだ。
それから、シカマルとシノを交互に見つめる。
二人の真剣な眼差しに、ナルトは漸く口を開いた。
頬を染め、遠慮がちに、小さな声で……。


「男同士のHって、どうやるってば?」


「は?」

シカマルは耳を疑った。
およそナルトの口から出るとは思えない言葉。
てっきり任務に関することか、忍術等に関することだとばかり思っていたのに、ナルトが発した言葉は自分の予想とはあまりにもかけ離れていた。

「Hって……、あれだよな?」

隣のシノに、同意を求めると、無言で頷かれた。

「ナルト……その、やっぱりあの人絡みか?カカシ……。」

シカマルが口にしたその名に、ナルトは耳まで赤く染めた。
ナルトとカカシが付き合っているのは知っていた。
里の忍ならば殆ど知っていることだろう。
なんと言っても、その手のことならカカシの右に出る者はいないだろうと言われる程、男女問わず相手に不自由することなど考えられなかったカカシが、どうやら本気で、12歳の、それも里で一番有名な子供に夢中だと噂されるようになったのは、もう随分前からで……。当のカカシ本人も全く否定しなかった為、それは真実だと伝えられるようになった。
やがて二人は恋人同士に発展したと噂され、里の其処彼処で、二人のイチャパラぶりが目撃されている。

そりゃ、ナルトが喰われちまうのも時間の問題だとは思っていたが……。

シカマルは顎に手をやって考える。

面倒なことになって来やがった。
ヘタなことを言ってカカシの逆鱗に触れればただじゃ済まねぇ。
今までナルトに手を出さなかったのには理由があるに違いない。
まずはそれからだ……。

「ナルト、なんでそれを知りたいのか話してみろ。」

シカマルの真剣な顔を見て、ナルトは緊張した。

やっぱり、とっても難しいことだってば?
オレじゃ出来ないかもしれないってば。

不安な面持ちでナルトはポツリポツリと話し出した。

「昨夜さ……。」










ほんの微かな気配。
まどろみ始めていたナルトは、それでも目を開け、身体を起こした。
窓から入って来たその人物に、はんなりと笑いかける。

「カカシせんせ……会議……終わったってば?」

「うん、ごめんね?起こしちゃった。」

「いいってば。オレ、今寝た所だってばよ。」

毎日の任務の後、カカシの用事が無ければ二人は必ず一緒に過ごしていた。
今日は火影の屋敷で会議があるからとカカシに言われ、ナルトは自分の家で過ごし、それでもつい先刻までカカシを待っていたのだった。

「こんなに遅くまで待っててくれたの?」

カカシはそう言いながらベッドに入り、ナルトの隣に横になる。
ナルトもカカシに促されて再び横になった。

「先生、来てくれて嬉しいってば。」

額当てもマスクも外したカカシを見つめながら、本当に嬉しそうに微笑む。

「ナルトに会いたかったから。」

カカシも微笑み返し、ナルトをそっと抱き締める。

「ねぇ、カカシ先生。欲しい物、ある?」

「欲しい物?」

突然出て来たナルトの言葉に、カカシは問い返す。

「うん。先生さ、15日誕生日だってば?何か欲しい物、ある?」

「覚えててくれたんだ。」

「オレで買える物だったら言って?先生の欲しい物プレゼントしたいってば。」

きらきらと瞳を輝かせて自分を見つめるナルトに、カカシは苦笑する。


欲しい物……物……では無いけれど……ずっと欲して止まないモノならある……。


カカシが黙っていると、ナルトは不安そうな顔をする。

「先生、欲しい物、無いってば?それともオレじゃ買えない物?」

まるで自分に非があるようなその表情に、カカシは堪らずナルトを強く抱き締めた。

「何でもいいの?」

目を閉じ、祈るように口にする。

「いいってば。先生、欲しい物あるってば?」

「あるよ。しかもナルトからでないと貰えないモノ。」

「ほんと?何?言ってよ、先生。」

愛しくて、大切で、壊してしまうのが恐くて堪らない存在。



「ナルトが……欲しい。」



そう告げるカカシに、ナルトは一瞬身体を強張らせた。

「え?……オレ……?」

カカシはナルトを抱き締めていた腕を緩めると、うっすらと開かれたその唇に口付ける。

「ん……。」

いつもは啄ばむように始まるそれが、今日は最初から激しく貪るようなもので、ナルトは追いつくのに必死だった。
縋り付く手を外され、シーツに縫い止められる。
強引に奪われるような、その感覚。

「……せん…せ……あ……。」

息継ぎの合間に非難の声を上げても、カカシが行為を止めることは無く、それはナルトが愉悦の涙を零し始めるまで続いた。

「ん……ふ……。」

漸く解放され、息を荒くしたナルトが潤む目で見上げれば、カカシは蒸気したナルトの頬をそっと撫でた。

「これ以上のこと、してもいい?お前を欲しいって、そう言うことだよ?」

ナルトは自由になった両手でカカシにしがみ付いた。

「いいってば。カカシ先生なら、いいってばよ。先生の誕生日に、オレをあげるってば。」

「ナルト、そんなに簡単に言っちゃっていいの?」

逆に戸惑うカカシを真っ直ぐ見つめて、ナルトは宣言した。

「もう決めたってばよ?先生の誕生日プレゼントはオレ!いい?」

カカシは少し困ったように笑い、それからナルトの耳元で囁いた。

「ありがとう、ナルト。愛してるよ。」

その言葉に安心すると、カカシの腕に抱かれながら、ナルトは眠りに落ちて行った。








「それってさ……Hしたい……って、ことだってば?」


ナルトの説明を聞き終わった二人は、冷や汗を流していた。

殺られる。

想像以上だ。
想像以上に、カカシはナルトにメロメロだ。
ヘタなことは言えねー。
カカシの思惑通りに行かなかったら……確実に殺される。

ゴクリと生唾を飲み込むと、シカマルはどうしたものかと考えていた。

「なぁ、ナルト。その……男と女が、どうやるかは、知ってんのか?」

「し、知ってるってばよ!この前キバが……エ、エロい本、見せてくれたってば。あ、あと、ビデオとかも……。」

もごもごと口篭るナルトに苦笑しつつも、シカマルは胸を撫で下ろし、キバに感謝した。

ひとまず安心だな……そこから説明しなきゃなんねーのかと思ったぜ。

「でも、男と女は違うってば?女の人にはちゃんとあるけど、男にはねーもん。」

まぁ、確かにそうだが……。

「ナルト、お前、解ってるんだよな?」

「解ってるってばよ?女の人にはちゃんと入れる所があるってば?でも、男にはねーじゃん。」

シカマルは苦笑した。

「や、そう言うわけでもねーだろ?それは。」

「男にもあるってば?!でも、オレにはねーってばよ!オレってば変なの!?」

「違うって!……その、そうじゃなくってだな……。」

シカマルが胡座をかいて、頭を抱えると、二人のやり取りをずっと見守っていたシノが、口を開いた。




「男は直腸で愛し合う。」




直球勝負。

シカマルは顎を落とした。

「ちょ……っ!シノ!このバカ!人が折角当り障りのないように……」

「解りやすいように言ったまでだ。」

「ストレート過ぎんだよ!お前は!」

いきなり怒鳴り出したシカマルと、妙に冷静なシノ。
二人を見比べてからナルトは問い掛けた。

「なぁ、チョクチョウって……何処だってば?オレにもあんの?」

きょとんとした顔で見つめられ、シカマルは溜息を吐いた。

「あるよ、お前にだって。」

「知らなかったってば!どこ?どこにあんの?」

シカマルは泣きたくなった。
いっそのこと、この場でひん剥いて「ここだ!」と教えてやりたい気分だった。

「直腸は……。」

シノが口を開いたが、シカマルが慌てて止める。

「だーっ!お前は黙ってろ!」

そして、深呼吸すると、ナルトにそっと耳打ちをした。


「……………。」


「解ったか?」

驚愕に目を見開いたままのナルトに、恐る恐る声をかける。




「無理だってばよ――――――っ!!」




耳を劈くようなその声に、シカマルとシノは思わず顔を顰めた。

「入りっこねーってば!オレってば座薬だってダメなのに、あんなの入んないってばよ!!」

座薬と比べられたんじゃ、カカシも気の毒だな。

シカマルは思わず笑いそうになって、必死で堪えた。

「あんなの……って、見たことあんのか?」

シカマルがにやにやしながら聞くと、ナルトは半泣きで答えた。

「あるってば!一緒に風呂入ったりするもの。でも、でも、あんなでっけーの入んないってばよ!!」

ナルトの言い方が気になって、シカマルは再度問い掛ける。

「そんなにデカイのか?」

「すげー、すげー、でっかいってば!!どうしよう!オレ、オレ……。」

ついに泣き出してしまったナルトを見ながら、シカマルは冷めた頭で考えていた。

風呂の時ってことは、普通で……ってことだよな?
普通で、そんなにデカイのか……?

見てみたい、と言う気持ちと同時に、ナルトが不憫に思えて来た。

「まぁ、別に急がなくてもいいんじゃねーの?カカシだって、今すぐってわけじゃねーんだろ?」

「もう約束しちゃったてば!男と男の約束だってば!」

この状況でそんなことを言っても仕方ないんじゃねーか?

シカマルが、かなりマズイ状況に陥っていることを認識し始めた時、シノがナルトの隣に座った。

「練習すればいいんだ。」

「れん……しゅう?」

えぐえぐと泣いていたナルトが、シノを見つめる。

「そうだ。誰だって初めから上手く出来ることなんて無い筈だ。初めからそんなにデカイモノは入らなくても、練習すれば入るようになるかもしれない。」

「本当?」

潤んだ瞳で見つめられ、シノが一瞬びくっとしたのを、シカマルは見逃さなかった。

「ほ、本当だ。」

シノが力強く頷くと、ナルトは漸く笑顔を見せた。

「わかったってば。オレってば、頑張る。」

決戦の日(?)に向けて、ナルトの孤独な戦いが始まった。









9月15日。

ナルトは朝から浮かない顔をしていた。
いつものように任務に出ても休憩時間には溜息ばかり吐いていた。
カカシが最初に変だと気付いたのは5日前のことで、ナルトはそれから日に日に元気が無くなって来ている。
毎日のように、カカシが尋ねても『なんでもないってば。』と言う答えが帰ってくるばかりだった。

「ナールト。」

昼食の後、木蔭で木の幹に凭れるように座っているナルトの目の前に、カカシは立っていた。
ナルトと視線を合わせる為、中腰になる。

「カカシせんせ……。」

考え事をしていたのか、ナルトはびっくりしたように、顔を上げた。

「どうした?」

カカシが問えば、やはりいつもの答え。

「なんでもないってばよ。」

そのまま俯いてしまうナルトに苦笑して、横に腰を下ろす。
と、思い出したようにナルトがパッと顔を上げた。

「先生、今日は七時頃まで家に帰って来たらダメだってばよ?」

「え?帰っちゃダメなの?」

目を丸くして、カカシが聞き返すと、ナルトは大きく頷いた。

「ダメだってば。オレ、カカシ先生ん家でちゃんと料理作っておくから、それまで帰って来ちゃダメ。」

「ああ、そうなの。」

カカシはくすくすと笑ってから、ナルトの頭を撫でた。

「了解。楽しみにしてるよ。包丁で手切ったりしないように気を付けてね?」

「解ってるって。大丈夫だってば。」

ナルトはカカシを見上げ、ニカッと笑った。









テーブルの上には綺麗な花が飾られ、所狭しと並べられた料理。
カカシが七時に帰宅すると、満面の笑みでナルトに迎えられ、カカシは、何日も前から練習し、ナルトが一生懸命作ったであろうその料理を、ナルトの四苦八苦する様子を思い浮かべながら、ゆっくりと味わった。

「ごちそう様、ナルト。とっても美味しかった。」

「へへへ、どう致しましてってば。」

二人で後片付けを済ますと、ナルトが『あっ!』と、声をあげた。

「まだあったってば。」

ナルトは慌てて冷蔵庫を開けた。
中から出した物を皿に乗せ、カカシと、自分の前に置く。

「誕生日にはやっぱケーキがなきゃダメだってばよ。まあるいやつは……ちょっとお金が足んなくって……。」

カカシは目の前に置かれた苺ショートをじっと見つめていた。

「せんせ?やっぱ……まあるいのが良かったってば?」

ナルトが不安そうな目を向けると、カカシは慌てて顔を上げ、にっこり笑った。

「違うよ。ケーキまで用意してくれると思ってなかったからね。先生、驚いちゃった。ナルト、ありがとう。嬉しいよ。」

「ほんと?良かったってば。」

ぱあっと、顔を明るくして、ナルトはフォークを掴んだ。

「先生、早く食べるってばよ。」

「ああ、そうだね。」

自分が食べ始めなければ食べる様子の無いナルトを見て、カカシはショートケーキを一口、口に入れる。

「おいしい?」

「とってもおいしいよ。ナルトも食べて?」

「うん。」

にこにこしながらケーキを口に運ぶナルトを、カカシはじっと見つめていた。
そして、ふと思いついたように、自分のケーキをひとかけらフォークに乗せ、ナルトの目の前に差し出す。

「ナルト、あ〜ん。」

「な、なんだってば?自分で食べるってばよ。」

「食べてくれないの?」

カカシが心底残念そうな顔をすると、ナルトは真っ赤になりながらも、差し出されたケーキを口に入れた。

「おいしい?」

「おいしいってばよ。せ、先生も……。」

ナルトは言いながら、自分もケーキをフォークに乗せると、カカシの目の前に差し出す。

「せんせ?あ〜ん、だってばよ。」

「あ〜ん。」

カカシは幸せそうに口を開け、ナルトが差し出したケーキをおいしそうに食べた。

「おいしい?せんせ……。」

「凄くおいしい。ナルトが食べさせてくれたから余計においしいよ?」

結局そのまま二人はお互いのケーキを最後まで食べさせ合った。

「お腹いっぱいだってば〜。」

満足そうに微笑むナルトの頬を、カカシは人差し指でつつく。

「ナルト、クリーム付いてるよ?」

「え?どこ?」

手の甲で口元を拭おうとするナルトの首の後ろに手を差し入れると、カカシはそのまま引き寄せた。

「……んっ……。」

テーブル越しで、イキナリ口付けられ、ナルトは面食らう。
無理な体勢のまま、カカシは口付けを深くして行った。
角度を変え何度も口付ける内、うっすらと開かれた唇から、熱い舌を差し入れる。
口腔を余す所無く堪能すると、漸くナルトを開放した。

「ごちそうさま、ナルト。とっても甘かったよ。」

ナルトは火が出そうになる位顔を真っ赤にして、『うう…。』と唸った。
そんなナルトをじっと見つめていたカカシは、静かに口を開いた。

「ナルト……。プレゼントのことだけどね……。」

その言葉を聞いて、ナルトの身体に緊張が走る。

「も、勿論覚えてるってばよ。」

唇を噛んで、微かに身体を震わせるナルトを見て、カカシは辛そうに笑った。



「また、今度の機会にしようね。」



「え?」

ナルトは耳を疑った。

「カカシ先生?ど、どうして?なんで?」

身を乗り出してカカシに尋ねる。

「今日じゃなくたっていいから。そんなに焦る必要はないしね。ごめんね?あんなこと言って……。」

微笑みながら答えるカカシを、ナルトは唖然と見つめ、そして、椅子に深く腰を下ろした。

「う……ふぇっ……。」

そのまま泣き出してしまったナルトを見て、カカシは目を見開いた。

「ナルト?どうしたの?」

「ふ……うぅ……せんせ……オレんこと……嫌い……なったってば?」

「そ、そんなこと、あるわけ無いでしょ!?」

カカシは慌てて椅子から立ち上がり、テーブルを回り込み、椅子に座っているナルトを抱きしめた。

「オレがお前を嫌いだなんて……なんてこと言うの……。」

「だって……約束……ふぇ……先生のプレゼント……オレ……って……。」

自分の胸を涙で濡らすナルトの髪を、カカシは愛おしそうに撫でる。

「恐かったろ?」

「え?」

ナルトは涙に濡れた瞳で、カカシを見上げる。

「お前、ずっと元気なかったでしょ?今日が来るのが恐かったから。」

「せんせ……。」

「恐いのは当たり前だよ。お前はこんなに小さいんだから。ごめんね?恐がらせて。」

「違うってば!」

ナルトはカカシの腕から抜け出し、カカシを真っ直ぐ見つめた。

「そんなんじゃないってば。オレが……オレが恐かったのは、先生に嫌われるんじゃないかって思ったからだってば。」

「だから、どうしてそんなこと思っちゃうの?ナルトは……。」

眉を寄せて少し怒ったように、カカシは問い掛ける。

「上手に……出来ないからだってば……。」

「上手に……?え?何を?」

カカシは自分とナルトの会話が噛み合っていないような不安を感じた。

「お、男同士のやり方……聞いたんだってば。でも、オレ、無理だと思って……、練習したんだけど、全然ダメで……。」

「ちょ、ちょっと待って、ナルト。そんなこと誰に聞いたの?それに、練習って……?」

カカシは、血の気が引くのを感じ、冷や汗を流しながら、ナルトの肩を掴んだ。

「シカマルとシノに聞いたってば……。練習は……、自分で……入れてみようと思って……でも、ちっとも入んねぇし……。傷薬みたいなの貰ったから、それ塗って、やっと指一本なんだってば。こんなんじゃ……入らないってば。そしたら、先生に嫌われちゃうってばよ……。」

「ナルト……。」

カカシはホッとすると同時に、ナルトを不安にさせた自分を腹立たしく思った。
そして勿論、頭の片隅ではシカマルとシノへの小さな怒りも沸々と沸いていた。

「全く……お前は……。あのね、そんな心配はいらないよ?入らないなんてことは無いから。」

「えっ!?ほんとだってば?」

途端に表情を明るくして目を丸くするナルトを見て、カカシは苦笑する。

「ほんとだよ?ただね、ナルトは凄く痛い思いをしなきゃならないから。だからね、もう少し経ってから……。」

「痛いのなんて平気だってば。」

カカシが最後まで言い切らない前に、ナルトはカカシにしがみ付いた。

「入るんだったら、それでいい。カカシ先生にされるんなら、痛いのなんて我慢するってば。」

「無理に今日じゃなくったっていいんだよ。そんなに焦る必要は無いの。ゆっくりゆっくりでいいから。」

「やだ!誕生日には欲しい物あげたいってば。大好きなカカシ先生が、一番欲しい物あげたいんだってばよ。それに、他のプレゼントなんて何にも用意してないってば。そんなの嫌だってば。恋人同志なのに……。」

一歩も譲らない雰囲気のナルトに、カカシは小さく息を吐いた。

「料理とケーキ、ナルトの気持ちも、ちゃんと貰ったよ?」

「そんなんじゃダメだってば!先生、オレのこと、欲しくなくなったの?」

自分を必死に見つめるナルトに、カカシは真剣な眼差しを向ける。

ずっとずっと欲しくて仕方のない存在。
自分の手の内に取り込んで、逃げ出してしまわないように、大事に大事に扱って来たつもりだった。
あの時、どうしても抑えが利かず、不用意な発言でナルトを苦しめる形になってしまったことを後悔しても、今更遅い。
自分の想いを疑われるくらいならば、思いの丈をぶつけてしまう方がまだマシだ。

カカシはナルトを優しく抱き締めると、もう、後戻りは出来なくなるであろうその言葉を口にした。


「欲しいよ。ナルトが欲しい。」


「だったら貰ってってば!」

ナルトはカカシにしがみ付く両手に力を込めた。

小さなぬくもり。
けれど、自分を想っていてくれるのがしっかりと伝わって来る。
カカシはそんなナルトを愛おしそうに抱き締めた。

「貰う。大事にするよ、ナルト。」

その言葉に、ナルトは漸く身体の力を抜いた。

「カカシ先生。お誕生日おめでとうだってば。」

にっこり微笑むナルトに、カカシも微笑み返す。

「ありがとう、ナルト。最高の誕生日だよ。」

カカシはちゅっと音を立ててナルトの唇に軽く口付けると、その小さな身体の背中と膝裏に手を差し入れて、そっと抱き上げた。
二人で、甘い甘い時間を創り上げて行く為に―――。






END?






いや、別にどこまで甘い物が書けるか挑戦してるわけじゃないんですが……。
なんでこんなことになったんだろう……(笑)。
書いてて恥ずかしくなちゃっいました、あまりの馬鹿ップル加減に。まぁ、カカシの誕生日なので、良しとしましょう(いいのか?)
シノの例のセリフは、某商業誌漫画から頂きました。どうしてもシノに言わせたくって(笑)。
しかし……、表の小説なのに下ネタって、どうよ?
すみません、下品な女で……。
馬鹿ップル好きな貴女のご感想、お待ちしております♪

火野 晶






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